幼児期におけるシュタイナー教育

この時期に育つもの

シュタイナー教育では、子どもを年齢ごとのふさわしい教育で育てます。

0歳~7歳までは健全な「からだ」とはっきりした「意志」、そして豊かな「感性」が育つ時期です。

1.さまざまな動きの体験を自発的にすることで、「からだ」が育ちます。

自由に遊ぶことでからだを思いきり動かし、手仕事や料理などでは繊細に手先を使い、さまざまな動きを身につけます。同時にコントロールする力やバランスを取る力も身につけていきます。自発的に動くことで、生き生きと動くからだが育てられるだけでなく、目に見えない内部でも充分に機能する臓器がつくられます。そして、真に健全なからだが育ちます。柔軟で多様なからだの動きは、大きくなってからの考える力のもとになります。

2.子どもに合った安定したリズムのある生活が繰り返されることで、「意志」が育ちます。

「吸う」と「吐く」、「集中」と「拡散」、「静」と「動」の両方を繰り返し体験できるように、生活リズムを整えています。そうすると子どもは安心して毎日を過ごし、良い習慣を身につけられます。そのことで意志が育まれ、呼吸や脈拍も整い、健康なからだと臓器がつくられていきます。

「意志を育てる」ことは、子どもの要求のままに何でもさせることではありません。ここで言う「意志」とは、ひとつのことを最初から最後までやり遂げる体験を繰り返すことで、無意識に身につく力です。それが大きくなった時に「あきらめずに最後まで取り組もう」という、意識した力のもとになるのです。
その要求が子どもの意志なのか、その場の衝動的な思いつきだけなのかは大人が見極め、導いてあげなければいけません。気が向いたことはやるけれど、飽きたら投げ出したり、集団生活に必要なことでもやらなかったり、自分の思い通りにならないと人のせいにしてしまうというのは、本当の意志の力を身につけたとは言えません。どんなことがあっても最後までやる感覚、あきらめずにやり続ける感覚は、リズムのある生活の繰り返しから無意識の感覚として小さい時に身につきます。それが意志の力のもとなのです。

3.多様な感覚体験を通して、「感性」が育ちます。

当園では、さまざまな物に直に触れて遊び、興味を持ってよく見て、耳を澄まし、おいしい匂いを嗅いで味わう、といった体験を日常の保育の中で行います。美しい色彩の手仕事道具やクレヨンなどを使った活動は、子どもにとってのよき芸術体験になります。
また、人と人との温かい雰囲気の中で、子どもが安心して過ごせるよう、機械音や映像などは使いません。そういった「生きた」世界に触れることで、子どもは生き生きと成長していきます。さらに、教師が落ちついて語る言葉やお話や歌が、さらに安心して自分らしく遊ぶことのできる場をつくります。
さまざまな感覚体験を通して、友だちと一緒に遊ぶなかで豊かな感情が育まれ、それがまわりの世界とつながって生きていく力のもとになっていきます。

教育方針と特徴

当園では、「からだ」、「意志」、「感性」が育まれるように、日々の保育で以下のことを特に大切にしています。

〇リズムと繰り返し

〇自由遊び

〇縦割り保育

〇模倣と手本

1.リズムと繰り返し

リズムのある生活の繰り返しから、子どもは安心して自由に遊ぶことができるようになります。そして、時間が来たら決まった場所におもちゃを片付けます。初めから最後まで毎日体験することで、どんなことでも最後までやる感覚を身につけます。同じことを繰り返すことで感じられる安心感は物事をやり続ける力のもとになります。安心な生活の中で子どもが個性豊かに遊びを自分の内面から生み出し、実際に行動してつくり出します。友達とけんかしても、つくりたいものが上手くいかなくても諦めずに工夫してやり続け、達成していきます。その工夫や努力して得た達成感や大きな喜びの積み重ねが、行動力と結びついた強い意志を育てます。それはどんなことがあっても乗り越えていく力のもとになります。そのことで意志が育まれ、呼吸や脈拍も整い、健康なからだと臓器がつくられていきます。

2.自由遊び

ごっこ遊びのような、子どもが内面から生み出す遊びを大切にしています。そのような遊びから意志や考える力や社会性が育てられます。想像力豊かに遊びがつくり出せるように、素朴な自然素材のおもちゃを用意して、遊ぶ時間を充分に取ります。そして、豊かな遊びが生み出されるように、保育者はライゲンやお話や人形劇をして、子どもの創造力がさらに豊かになるようにしています。

3.縦割り保育

当園では、3~6歳の子どもどもたちが兄妹姉妹のように一緒に生活しています。小さい子は助けてもらうことで大きい子の優しさに触れ、大きい子は小さい子を助ける喜びを味わいます。年齢の違う友達と接する中で、お互いがそれぞれ違う存在として認め合えるようになっていきます。子ども一人ひとりが成長していく過程で、末っ子(年少)、真ん中っ子(年中)、長男・長女(年長)の立場を体験できることは、縦割り保育ならではのことでしょう。この体験は、子どもの社会性や人間関係を豊かにします。

4.模倣と手本

7歳までの子どもは、すべてを真似することで覚え、身につけます。それも、どのような思いでその行為をしているかという内面のありようまで真似します。この、“真似する力”を模倣と言います。私たちは大人として子どもが模倣できる動きとわかりやすい言葉で導きます。例えば、「食べ物を大切にしましょう」と言葉でいくら言っても、子どもには具体的にどのようにすることなのかよくわかりません。その言葉を口にしなくても、身の回りの物を大切に扱い、食前には歌を歌い、食べ物を育ててくれた自然の力にも感謝する姿勢を大人がいつも示していることで、子どもには大切にするということや感謝するということが、気持ちのこもった行動として伝わっていきます。