ありがとう、12年生
1年生保護者が12年生の七頭舞の踊り納めによせて、1年をふりかえります。
日差しが暖かくなり、学校の周りのこぶしの花も満開になり、気づけば3月も半ば。
4月に東京賢治シュタイナー学校に入学した息子も、ついに1年生最後の日を迎えました。その日、校庭では高等部の生徒たちによる七頭舞(ななづまい)*の踊り納めがありました。12年生(高校3年生)にとっては、最後の七頭舞です。
トントントトンという軽快な太鼓の音を聞きながら、様々なことを思い出します。
約1年前の4月の入学式。
1年生の子どもたちが緊張した面持ちで座っている中、歓迎の挨拶の時にひざまづいて子どもたちと視線を合わせて話してくれた、ひとりの生徒がいました。
「みんなは何歳?・・・これからみんなと話したいし、遊びたいし、勉強したいです。」
12年生の生徒会長のK君でした。
K君はその後立ち上がり、私たち保護者の方に向き直り、「僕たちの学ぶ姿勢で、親のみなさんを安心させられたらと思います。」と、話してくれました。
この学校の右も左も分からなかった私たち保護者は、このK君の飾らない、でもとても思慮深い言葉に勇気づけられたものでした。
そのK君の言葉の通り、12年生の生徒たちはこの1年間様々な姿を見せてくれました。ある時は七頭舞の躍動感溢れる若さの輝きを。ある時は論文発表を通してそれぞれの内にある探究心を。ある時は舞台の上で堂々と表現する力強さを。
この1年間の様々な学びを通してさらに力をつけた12年生は、2月のオイリュトミー発表会でもEVOEを見事に表現し、多くの人の心に静かな感動を与えました。
そして迎えた七頭舞の踊り納め。12年生の最後の舞台です。
なぜか七頭舞を踊る時はいつも、生徒たちの熱意に応えるように、太陽もギラギラと暑い日差しを投げかけます。この日も眩しい日差しの中、汗もそのままに踊る生徒たちの姿を、保護者も低学年の生徒たちも真剣な面持ちで見守りました。
12年生のみなさんはどんな気持ちだったのでしょう。これまでの楽しいことや、辛いこと、語り尽くせないほどの思い出がみなさんの踊る姿にあらわれているようでした。
約30分間全力で踊り終えた時には、汗にまじって安堵の笑顔や涙がこぼれる姿も見られました。
このように日々一生懸命学びに取り組む12年生のお兄さん、お姉さんたちの姿は、1年生の子どもたちにもきらきらとまぶしく輝いて見えていたと思います。
恥ずかしがり屋な息子が、「ぼくもいつかKくんのように先頭で踊りたい」と言った時は、この小さな学校で1年生から12年生の子どもたちが一緒に学ぶことの素晴らしさを実感しました。
まだまだ先の未来ですが、1年生の子どもたちが12年生になった時にどのような姿を見せてくれるのか、とても楽しみになりました。
12年生のみなさん、保護者のみなさん、この1年間たくさんの勇気と感動をいただいて、ありがとうございました。みなさんから受け継いだ見えないバトンを、大切にしていきたいと思います。
ご卒業おめでとうございます。
1年保護者
*七頭舞(ななづまい)岩手に伝わる郷土芸能。詳しくはこちらのページでご覧ください。