シュタイナー教育、東京賢治シュタイナー学校についてのよくある質問にお答えします。
シュタイナー学校・シュタイナー教育とは
ルドルフ・シュタイナーは1919年にドイツのシュトゥットゥガルトにおいて最初のヴァルドルフ学校を設立しました。
タバコ会社《ヴァルドルフ・アストリア》の社長エミール・モルト氏は当時においては斬新な社会的意識にみちあふれた人物で、ルドルフ・シュタイナーの考えに共鳴し、彼のタバコ工場で働く労働者の子どもたちに学校をつくってあげたいと考えました。そこで彼はルドルフ・シュタイナーに相談したのです。
ヴァルドルフ学校の教育方法はルドルフ・シュタイナーの研究した人間の成長の法則、いわば人間学から生まれています。教育と並列して彼の精神科学の研究からバイオダイナミック農業が生まれ、さらに医療機関や芸術が生まれました。
ヴァルドルフ教育は日本では一般的にシュタイナー教育と呼ばれています。
シュタイナー学校では生徒の理解力と創造性、芸術的、手工的実践的、社会的能力を均等に発展していかせたいと願っています。
生徒は1年生から2カ国の外国語を学び、男子も女子も手仕事では編み物や裁縫、裁断も一緒に学び、同じように工芸では一緒にのこぎりで木を切り、やすりをつかって磨き、小さな家具を作成します。さらには版画づくりや藤制作、糸紡ぎや織物制作を行います。
12年生は高いレベルのオイリュトミー公演や演劇を手がけ研究発表では自分で選んだテーマについて論文と実践で取り組みます。さらに園芸もこの学校の中心的取り組みとして行われていきます。
公立学校と違うところは知的教育に重点を置くだけではなく、社会的、技術的、手工芸的、芸術的能力をも子どもたちに要求し、頭からつま先まで生き生きと活動できる実践的な人間をつくり上げて行きます。
もちろん1年生から8年生(中2)まではテストの点数をつけませんが、当然のことながら教師は授業中の筆記試験(これはテストのように点数をつけるのではなく、教師の確認として行う試験です)で彼らの取り組みを確認し生徒に返します。
しかしそこでの評価は点数という貧弱なやり方ではなく、個々の教師が個性的にその生徒を評価していきます。さらにシュタイナー学校の通信簿は生徒の個性の発展と学びの発展が非常に詳しく書かれています。シュタイナー教育は人間の成長段階に合わされています。ですから知識の量ではなくその子ども全体においての成長が決定的なのです。1年生から12年生まで生徒は、ある成長期間の学びの能力が弱かったとしても可能な限り同じクラスの共同体の中で学びます。
シュタイナー学校の授業は生徒の成長段階を読み取ってつくられています。
しかも授業内容は日々の日常生活に密着しているので、点数がつかないからという理由で学ばないケースはほぼまれです。どの年齢においても生徒たちは成績の重圧から自発性を発展させるのではなく、健康なモチベーションから自らの学びの自発性を発展させているのです。
まったく逆です。実際の現実においてはシュタイナー学校の生徒がさまざまな職場や大学でその能力の高さを評価されています。
知的能力だけを要求されるのではなく、現在の社会において決定的な質であるチーム能力、クリエイティヴな力としての創造性、そして一つ一つの段階を追って思考ができる能力が要求されます。それはすでに1年生のときから育まれているのです。シュタイナー学校の卒業生の大学での学業成績は高く、職業においてもさまざまな分野で高い業績を上げています。
教師と生徒について
シュタイナー学校は、基本的に宗教や皮膚の色、親の職業、性別に関係することなくすべての子どもに対して開いています。
詳しくは学校説明会に参加してください。そのあとに入学面接に向けてのプロセスがあります。高等部においても編入の窓を開いています。
入学・編入のご案内いいえ、シュタイナー学校は英才教育機関ではありません。
もしシュタイナー学校の生徒が線を描いたり、水彩画を描いたり、彫塑をしたり彫刻をした場合、出来上がった作品ではなく、その子どもが行ったプロセスが重要となります。そのプロセスの中で子どもや若者たちは自分のもっている能力をどんどん発展させていくのです。しかも芸術作業という枠を超えて。
シュタイナー学校の教師たちは、生徒の理解力と創造性と個性を同時に成長させていくことに日々努めています。
いいえ、これははっきりと違うといえます!
公立学校と同じように部分部分においての学力の低い子どもや、授業の邪魔をするようなふるまいをする子どもは存在します。もちろん明らかに障害がある場合、別の機関の学校に通うことがその子どものためになるでしょう。しかしもう一度はっきりと申し上げますが、特殊学校ではないこのシュタイナー学校では、公立学校の生徒たちと同じようにいろいろな能力を持った子どもたちが机を並べて学んでいます。しかし公立学校と違うところは知的教育に重点を置くだけではなく社会的、技術的、手工芸的、芸術的能力をも子どもたちに要求し、頭からつま先まで生き生きと活動できる実践的な人間をつくり上げて行きます。
いいえ、まったく逆です。シュタイナー学校の教師は1年生から「尊敬される存在(愛される権威)」として生徒との関係をつくっていきます。
子どもは大人を試し、やってはいけない境界を常に越えようとします。それが境界だということを子どもは大人を通してのみ体験できるのです。すると子どもは安心し、自分の中に信頼の気持ちが生まれます。もう一方生徒は自分自身の個というものも体験します。もちろん生徒が成長していけば学校生活の中で教師と生徒の関係は変わっていくでしょう。
シュタイナー学校の教師はシュタイナー学校の教師を養成する教員養成セミナーを受講しています。
そこではシュタイナー学校の人間学と教授法、方法論、そして授業カリキュラムが学ばれ、特に毎日朝2時間に行われるエポック授業の内容が学ばれます。そのあとは専科の教師が授業を行います。体育、外国語、オイリュトミー、音楽、手仕事の教科などです。低学年と高学年ではたくさんの知識の習得が重要なのでなく、生徒が自分の学ぶ内容と生き生きつながっていくことが大切なのです。このようにこどもが世界とつながれば、彼らの学びは喜びに変わっていくでしょう。しかも学ぶことへの喜びはこれから一生続いていくでしょう!
クラス担任は基本的に小中学部の8年間という長い期間、生徒や親御さんと密に接していきます。
第一印象での「合う・合わない」という感覚はあるかもしれませんが、これまでの教師と子ども、親との関わりを見ていていると、そういった感覚はすぐになくなっていくようです。なぜなら、何かあれば親も子どもも教師もとことん話し合っていく体制ができているため、不満や疑問を胸に抱えることなく、常に消化されていくからです。たとえ思い通りにいかないことがあっても、お互いにさまざまなやりとりをし、克服していく中で成長していくことができます。
また、本校の教師に共通しているのは、経験の違いや得手不得手はあったとしても、みんな支えあい、頑張っているということです。その頑張りがシュタイナーは教育的にも一番重要だと考えています。必ずしも教えるのが巧みな先生がいい先生というわけではありません。教師自身が一生懸命頑張り、努力している姿があるところでのみ、子どもは成長できるのです。最終的にはどの先生が担任になってもご縁なので、必ずその子自身が学ぶところはあります。それは何よりも子どもの表情と成長が証明してくれるでしょう。
基本的に東京賢治シュタイナー学校は、子どもたち同士が何らかの問題にぶつかったり、衝突したときにしっかりと向かい合いやり取りできる力を育んでいます。いわばいじめが起こる前に子どもたちの間に起こる問題を教師が素早くキャッチし、それに取り組むことを日々、大切にしています。
もし子どもたちの間でいざこざが起きたら、必ず担任の教師の導きのもと、両者に自分の気持ちを正直に話すように促します。徹底して正直な気持ちを伝え合った後は、お互いに相手の気持ちを理解するように導いていきます。その後も、たくさんの面談をしたり、子ども一人ひとりと会話したりと、子どもがありのままの自分の気持ちを話せる環境をつくっていきます。
教育内容・授業について
エポック授業はひとつのテーマを2週間から4週間にわたって集中して毎朝学ぶ授業です。
例えば歴史のエポックだったら生徒は2,3週間の間、毎日2時間集中して歴史について学びます。そしてその後は3週間例えば算数のエポックを集中して学びます。このように毎日集中して学ぶことで生徒自身が授業内容に深く入っていくことができますし、習得率も濃密になってきます。しかし基本能力である読み書きや計算はエポック授業以外の練習時間でもさらにクラスで取り組んでいきます。
もちろん生徒にとってはものすごく忙しい毎日になりますし、やることはたくさんあります。しかし実践的、芸術的取り組みの中で知識内容の習得密度が非常に高くなります。
手足を意識して使うことによって頭部が活発化してくるからです。その証拠にドイツ国内ではシュタイナー学校の大学進学率は高く、公立学校の進学率をはるかに超えています。
農業実習、測量実習、職業実習、社会福祉実習において生徒はとても深く社会というものを体験し、さまざまな職業との出会いの場を作ります。
しかし自分の職業を見つけるためではなく、社会的能力と自分の能力を築き上げていくためにこのような実習がおこなわれるのです。
高等部の生徒はすべての教科分野において専門の教師を通して授業を受けます。学校生活の中でずっと取り組んできた手工業的技術能力は9年生からさまざまな実習を通して広がった学びになります。
シュタイナー学校はどの宗教にも依存していません。
宗教の授業があったとしても親がどの宗教の授業を自分の子どもに受けさせるのかを決めます。後に思春期以降の高等部は若者が自分たちで決めます。しかもルドルフ・シュタイナーの思想や世界観は授業の対象には一切なりません。
オイリュトミーは1年生から12年生のすべての学年が学ぶ運動芸術です。
自由に動ける体操やパントマイムや踊りの動きとはっきり違うことは、オイリュトミーではアルファベットの一つ一つや音楽の一音一音に決まった動きがあることです。言語のオイリュトミーでは例えば生徒はある詩の意味だけではなく音の響きを動きを通して表現し、音楽オイリュトミーでは作曲の中に生きる音や音と音の間のインターヴァルなどを表現します。
シュタイナー学校がコンピューターを批判しているとはいえません。しかし慎重に取り組んでいきます。
高等部ではコンピューター教育を取り入れていますが、初めは9年生で初歩的な二進法の計算機、いわば初期のコンピューターを作成します。その後、コンピューターの誕生とその社会的背景、何のためにそれが役立つか、またはどのような危険性があるのかを話していきます。その後にタッチタイプの授業からワードプロセッサーによる文書作成、そしてプレゼンテーション資料作成等の実習をへて、12年生の卒業論文を仕上げます。コンピューターの本来の意味を見きわめ、コンピューターを自分でコントロールしていける強い内面性を育てていきます。
東京賢治シュタイナー学校について
賢治の授業や言葉に示された人間の生き方、精神の中には、現代の教育の在り方を考えるときの多くのヒントが見出せます。
この賢治の精神を子どもの学びから見ると、ドイツの哲学者 ルドルフ・シュタイナーが提唱する教育の人間観、カリキュラムと重なり合うと私たちは考えています。
賢治は人間の精神のあり方を「農民芸術概論綱要」や童話・詩などに記しましたが、具体的な教育の道筋、年齢ごとのカリキュラムなどは示しませんでした。シュタイナー教育には、この賢治の精神の教育的実践が息づいていると考えられるのです。
賢治とシュタイナー特定の宗教に基づいていません。
授業では幅広い国の文化や宗教を学びますので、教室によっては宗教画や仏像の写真が飾られています。
義務教育期間の子どもたちは、地元の公立学校に学籍を置いています。
入学時に、各家庭で保護者が地元の公立学校の先生と面接し、学籍を認めてくださるようお願いしています。場合によっては、学校として、在籍校に出向いて説明することもあります。
出席に関しては、東京賢治シュタイナー学校での出席が在籍校の出席として認められる場合もありますが、たいていは長期欠席、不登校扱いになっています。
義務教育期間に関しては、すべての子どもに卒業証書が在籍校から発行されています。
NPO法人の学校の通学証明では購入できません。
義務教育期間中は、在籍学校から通学証明を出してもらう必要があります。東京賢治シュタイナー学校を実習先とした通学証明で通学定期を購入します。ただし、義務教育期間でない10年生(高校1年)以上は、大人と同じ通勤定期を購入します。
※「在籍校での出席扱いに関して」・「通学定期に関して」は、NPO法人の学校でも認められるよう、働きかけています。
在籍校や地元教育委員会に、保護者が定期的に子どもの学びの様子を報告するなど、関係を積極的に築いています。
また、学習発表会などを案内し、実際に子どもの姿を見てもらえるように働きかけています。
2008年度に初めての卒業生を出し、2018年度に10期生を送り出しました。いずれの卒業生も、それぞれの希望の進路に、さまざまな条件をクリアして進んでいます。
本校での進路指導は、本当に進みたい道を生徒自らが見出していくプロセスに重点をおいており、そのプロセスを経ることで、生徒たちは、自ら、自分の第一希望に向かっていく力を見出していきます。
これまでの進路としては、演劇、IT、野生動物保護に関する専門学校、日本国内の大学、短大、ドイツのシュトゥットガルトのユーゲント・ゼミナール(シュタイナー教育の青年のための学校)などがあります。大学・短大の学部としては、音楽・美術学系、人文学系、社会学系、医学部、環境情報学部、理工学部など多岐にわたっています。大学や短大を目指す生徒のほとんどは、12年間の学びを終えてから、卒業後に自分に合った方法を選択して、受験勉強に臨んでいます。
卒業後の進路10年生・11年生で高等学校卒業程度認定試験を受け、大学受験の資格をとります。
将来的には学校法人、あるいは、法的に認められた学校になることは目標としてあります。しかし、法的に学校として認められるためには、校地校舎の設置基準が非常に高く、私たちのような小さな学校や一般市民が『学校』を設置することは非常に難しい状況です。
学校法人になることだけを目標として掲げると、学校法人になるために様々な条件をクリアすることに翻弄されてしまう恐れがあります。私たちが第一優先にすべきは、今通ってきている子どもの学びが保障されること、そして、教育実践がさらに充実したものになることです。
しかし、今後、『学校』のあり方や教育改革が求められていく中で、法律や制度がどのように変化していくのかはわかりません。私たちは、このように変化していく時代の先を見通しながら、私たちの学校がいつか社会的に認められることが、子どもたちにとって、とても重要なことであることをいつも念頭において、日々の学校づくりに取り組んでいかなければならないと考えています。
<NPO法人から構造改革特区を活用して学校法人になった例>
(前身 NPO法人東京シュタイナーシューレ)
* 学校法人 東京シューレ:2007年4月開校 東京都葛飾区
(前身 NPO法人東京シューレ)
* 学校法人 北海道シュタイナー学園:2008年4月開校 北海道豊浦町
(前身 NPO法人いずみの学校)
* 学校法人 明晴学園:
(前身 NPO法人 龍の子学園)
* 学校法人シュタイナー学園高等部:2012年4月開校 神奈川県相模原市
(前身 NPO法人藤野シュタイナー高等学園)