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11年の学び

目次

テーマ

感情の中で客観性に取り組みながら、真の洞察力を育んでいく。
さらには知覚できない無限大への思考に進み、
人生の挫折を通して真の個としての道を歩み始める。

学年の特徴

11年生は内面がより広がり、深くなる時期です。一人ひとりが自分の中に核を持ち、個が強くなるため、クラスの中で衝突や権力争いなどが起こりやすく、なかなかまとまりません。

個が確立しつつある段階ですが、まだ完全に相手を受け入れられるまではいかないのです。そのため、11年生になるとクラス全体で話すというよりは、教師が一人ひとりと面談することが増えていきます。悩みの多い年齢でもあるため、個々で話をすれば、悩みや不安を打ち明けてくれます。
物事を見抜く力はしっかりと備わっているため、すべての教科・領域において、マクロからミクロまで究極の深み体験をしていきます。また、11年生は光と闇を見つめる年齢でもあります。自分の中にある闇の部分を見つめ、付き合い、乗り越え、変容していく力を養っていくことが、この学年の大きなテーマになります。そして無限大に至るまでの深さと広がりの中で、未来への道のりが開かれていきます。

学年ごとの教科

数学

数列に取り組みながら極限値と呼ばれる、想像できない数学の領域を体験していきます。ユークリッド幾何学を高めた射影幾何学の法則に取り組み、無限大を思考で理解していきます。

生物学

顕微鏡を通して細胞学の学びを行い、さらに細胞から胎児学へと学びを深めていきます。天文学では顕微鏡の世界と対極に、今まで学んできた地球の領域を超え、宇宙を体験します。さらに顕微鏡の世界(ミクロコスモス)と、天文学を通しての大宇宙(マクロコスモス)との関係もつなげていきます。

化学

化学では酸化と還元の学びをした後、元素の特徴や総合作用に包括的に取り組み、窒素の酸化とナトリウムと硫黄の反応を学びます。そして物質量に取り組んだ後、元素周期律を習得していきます。元素周期律においては、元素の電子配置も学びます。

物理

10年生の物理学では力の作用としての力学に取り組み、目で見て観察できる物質領域がテーマでしたが、11年生ではではそれとは反対に、目では見えない電磁場領域から電磁波、放射線さらには放射能そして物質構成理論を学んでいきます。目では知覚できない世界を“思考”を通して理解していくのです。

歴史

古代から中世の文化を学び、ひとつの時代の流れから次の時代の流れがどのように生まれるかを追求していきます。中世の特徴とも言える「権力と信仰」という、人間の中にある2つの力を学ぶことは、心の中で起こっていることを、歴史を通して学んでいくことにもつがなります。さらに歴史の中に流れる時代の精神を思考の光に照らし、理解していきます。

国語

国語のエポック授業では、中世の『パルチヴァル英雄詩』を取り上げ、発展小説のひとつの例として取り組んでいきます。パルチヴァル英雄詩はひとりの人間が失敗を繰り返して成長していくお話です。パルチヴァルの人生は、生徒の今置かれている地点と並行する物語です。この文学を読み通し、人生は失敗して初めて意味があると学ぶことで、生徒たちは失敗を恐れなくなります。

2つめのエポックでは、パルチヴァルの内容と同じモチーフを、中世後の時代から現代に至るまでの文学の中に見つけ出していきます。更に宮沢賢治の『春と修羅』の詩を学ぶことを通して彼の深い理念をまなびます。

英語

偉大なる詩人や劇作家(英語では何よりもシェイクスピア)を全面的に取り組んでいきます。それ以外にも母国語の授業のテーマを変化させたかたちで活用する学び(国語のエポックで出てくるパルチヴァルをはじめとした騎士物語や、高い理念を持った作家の物語や詩作を学びます。)や、さらに英語劇の上演に向けて練習していく学びがあります。

天文学

今まで学んできた地球という領域を超え、地上の表象をはるかに超えた天文学の世界を学んでいきます。古代の天文学の観点から、現代の最新技術の天文学の道のりをたどる中で、人間と宇宙のつながりを多方面から詳しく取り組んでいきます。

経済地理

「エコロジカル・フットプリント」というテーマで、地学的、地理的、経済的な観点から、考察していきます。今まで、9年生からは地球の構造を内部から学び、10年生では表面の大気流と海水の関係と、それに伴う地球上の様々な領域の、気候についても学びました。そしていよいよ11年生では、その関係の中に人間が現れます。一体人間は、地球上の地学的、地理的前提条件の中で、地球とどのように関わっているか、またはこれからどのように関わっていくべきなのかを、地球環境の規模において集中して学んでいきます。

テクノロジー

この授業テーマは「エネルギーと物質」です。エネルギー獲得のさまざまな可能性(火力発電、原子力発電、水力発電、風力発電、太陽エネルギー)を技術的細部にいたるまで取り上げ、さらにエネルギー管理にも意識をもたらします。エネルギーの領域ほど、私たちが生活する世界を示している領域はありません。物理学と化学の横のつながりができ、そこからおのずとエコロジーの観点が生まれます。

コンピューター情報学

コンピューター情報学のテーマは、目で見ることのできない表象不可能なプロセスを理解することです。原因と結果の関係は10年生の作業過程において少しずつ理解を積み重ねてきました。しかし11年生ではそれをより思考的に理解していきます。静電学の観察は知覚できない領域を表象する過程へと発展していきます。半導体とその製造技術は、物理学的技術的背景をつくり上げます。

造形美術

絵画的造形的要素と音楽的詩学的要素を向かい合わせます。芸術様式の類似性と対極性を前面におき、さまざまな観点をあわせながら、包括的に芸術を見てきます。アポロン的要素(明確な形象を志向するようなもの)とデュオニゾス的要素(不定型な混沌としたエネルギーを志向するもの)、近代美術では印象派と表現主義の要素が観察の主題になります。

音楽史

広がった時間芸術として音楽史に取り組んでいきます。そこでは体系的音楽様式や音楽理論を学ぶだけでなく、音楽の本質と音体験の核心にせまります。さらに音楽と絵画をつなげ、印象派と表現主義の音楽考察を行います。

芸術実践

人間の心の表れである、問い、答え、会話、喜び、悲しみなどの身体的表現をつくり上げていきます。身体表現の作成を通して、主観的な領域である感情を客観的なものへと高めていきます。そしてさらにそのようなモチーフを自分で選んだ樹木で表現する「木彫」の作業が始まります。素材が粘土から木に変わることで、生徒の作品に向かう、力と意識も大きく変化し、確実な形成力が培われていきます。
さらに11年生では、木彫とはほぼ対照的に、印象派の絵画を通して「光」に取り組みます。対象物を解体し、光に生命を与えることで、芸術に対する新たな深い感受性が養われます。

オイリュトミー

一人ひとりが作品に取り組みながら、芸術的活動を通して個性を発揮していきます。
曲は10年生のベートーベンのような古典的楽曲から内面の情景が豊かに表現されるロマン派の楽曲に移行します。グループ全体で動く作品と並行して、ソロで練習する取り組みも始まり、学年末では小さなオイリュトミーソロ発表会が行われます。

社会福祉実習

11年生は実習として3週間の社会福祉実習を行い、生徒たちは障害者施設や介護施設で働きます。内面が広がり、自分の中に“ある種の強さ”や傲慢さが出てきたタイミングで社会に出て人のお世話をすることで、内面にあるエゴを克服し、新たな人間性を獲得することができます。その経過を通して生徒は、世界を新たな目で見ることができるようになるでしょう。

学年ごとのイベント

社会福祉実習、英語劇、オイリュトミーソロ発表会

11年生の人間学の観点からの概要

――感情の中の客観性そして内面の判断能力に取り組んでいく
本当の意味での自分の感覚を研ぎ澄ます
芸術の様式を学ぶことを通して、芸術を本質的に理解していく
社会の法則を理解する

――思考の柔軟性が法則を生み出す
10年生の厳密な論理的要素を新たな次元に導いていく

――さまざまな関係をつなげていく思考(総合的思考)
因果関係的思考を超え、プロセス的思考への道を見出していく
無限大への思考 知覚できないものへの感覚

――実習を通して苦しみ、断念を克服し個を確立していく取り組み

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