テーマ
自身の内面が生まれ始める、思春期目前の時期
学年の特徴
中学1年生にあたる7年生は、知的能力がより強まって、心の内面が少しずつ生まれ始める時期です。
さらに骨格組織がしっかりと成長します。それ以前は、自然なしなやかさがありましたが、この成長期においては、徐々により強く自分の骨格の重さに支配されます。いわば“重力”の支配する領域へ“落ちて”いきます。そのことで、身体の動きはより重くなり、ぎこちなく、だらだらとします。しかし一方で世界の中で生じる作用の関係を思考を通して理解し、「どうしてこうなるのだろう?」という結果から原因を求めたいと思う気持ちが生まれます。この因果的思考の練習によって、生徒自身が自分の判断に基づいて理解する力をつけ、人間的にも大きく成長する土台作りをしていきます。
反抗する気持ちもより強まり、自分の知的能力を確認するために、先生を試したりもします。それは“もっと思考したい”という現れなので、教師がより面白い、自分で思考できるような授業を提供すれば、生徒たちは満足して大人しくなるでしょう。やたら反抗したくなるのは、自分の能力を存分に使っていないからなのです。
この7年生での因果関係的思考が発達のため、授業も理科的内容が大きな重点をしめ始めます。この年齢の生徒も理科的実験をとても喜びます。そのため、教師はたくさんの実験を準備していきます。
学年ごとの教科
国語
6年生から始まった敬語の学びがさらに7年生でも続きます。 他の人が言った内容を正しく伝える文章を新しく練習します。その内容自体に責任を持つのです。他者と自分の意見をしっかりと文章の中で区別します。さらに思春期を迎える生徒の心にとってとりわけ大切なことは、感情の伴った文のさまざまな表現形式を意識化させることです。それには感心したり、驚いたり、願ったり、びっくり仰天したり、あきらめたり、断念したりする気持ちが表現されている文を作らせ、比較していきます。さらに物語詩(バラード)や短編小説を扱っていきます。文からイメージが生まれる生き生きとした学びです。文章を口述筆記する時、文のイントネーションの強調とはっきりと間を置くことによって、必要な記号(コンマ、感嘆符、疑問符、コロン)が「聞き取れる」ようにします。さらに、書道、演劇も行います。
数学
文字式や正負の数、展開、因数分解が導入されます。前年の学年から始めた代数計算と今年の中心的課題を通して、生徒は一般的に通用する計算規則に沿って計算していくよりも、よりはっきりとした意識を持てるようになります。代数計算と数字計算を密接につなげ、代数を通して普遍的計算の法則を理解します。生徒は徐々に平方、後は大きな累乗、そしてカッコの扱い方に慣れていきます。
さらに負の数を通して、生徒は新しい「数の性質」を知っていきます。わかりやすい例は、口座の預金が減り続け、借金に急変する場合です。計算の中で「正と負」に対する感情を通じた理解が徐々に深まります。(a+b)2の公式の応用は、正の数と負の数の楽しい練習の領域です。そして、ひと目で見通せる計算を書いていきます。頭の中で考えた数にXを代入し、解きやすい方法で方程式の表現形式へと移っていきます。そして、方程式の特徴である変形技術を徐々に発展させていきます。
幾何学
因果的、幾何学的思考の発展のために、特別にふさわしく特別に適しているのは、ピタゴラスの定理です。これは根本に遡った本質的な面積の考察です。直角三角形とその辺の上に作った正方形をさまざまな角度から観察することによって生徒は生き生きとしたイメージを持った思考を、はっきりとした判断力へと発展させていきます。前練習としての日時計(古代の太陽測定器)の考察があり、また二つの同じ三角形を互いに裏返しにつなげると、平行四辺形ができることも学びます。このことを通して平行四辺形の面積を考えることができます。 さらにピタゴラスの定理を学び、本質的な面積の考察に取り組みます。です。直角三角形とその辺の上に作った正方形をさまざまな角度から観察することによって生徒は生き生きとしたイメージを持った思考を、はっきりとした判断力へと発展させていきます。ピタゴラスの定理は、これからの学校生活の中ですべての学年を通して発展させていけるものです。
生命学(動物学・植物学・鉱物学)
7年生は自分の内側にも目が向き始めるので、今までの学びの包括として「生命」という観点から学んでいきます。特徴的なのが、動物学、生物学 、鉱物学の結集された教科として、「生命学」を学んでいくことです。命がどうやって生まれるのかを、植物、昆虫、魚類、両生類、鳥類、哺乳類など、動物界全体を見た後に人間についても学んでいきます。また、愛とは何か、精神的なつながりの尊さを学ぶために、「トリスタンとイゾルテ」の話を聞いて、愛の真髄に触れていきます。
化学
化学では基本的な取り組みである燃焼と水の中での溶解を学びます。さまざまな素材を燃焼させ、観察します。それから燃焼するときに欠かせない空気についても取り組んでいきます。酸、アルカリ、塩の生き生きとしたイメージが生まれるために紫キャベツの汁を使った実験をします。紫キャベツの汁に、一般に使われている酸、たとえばレモンの汁や酢を加えていきます。アルカリにおいては石鹸水、苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)が作用します。色彩豊かに酸からアルカリに変化していく作業の中で、化学の概念を生き生きと学んでいくことができます。そして最後に炭酸ガス、酸、アルカリ液、塩基の四つを明確に区別します。これらは食事、洗濯、掃除に関わる化学でもあり、日常生活に対する意識と実践力が培われます。
栄養学
7年生の人間学のテーマは「栄養と健康」です。この栄養学の授業においては三大栄養素について学んでいきます。一つ目は澱粉と糖分、二つ目は脂肪、三つ目はたんぱく質に重点をおきます。食塩の大切さについても学び、私たちの食品は動物界、植物界、そしてわずかながらでも鉱物界からきているということを学びます。「消化」「呼吸と血液の循環」「人間の熱の保持、熱の必要性」この三つの領域、栄養、呼吸、熱需要において、動物を取り上げながら授業が展開されます。7年生の子どもたちは、直に正しい栄養や保健衛生に対しての感覚を持っていますから授業内容はすんなりと子どもたちの中に入っていき、利己的に作用することはまだありません。
物理学
物理学の道の途中で私たちは力学に取り組んで行きます。てこの作用とてこの法則について取り組みます。天秤の竿とさまざまに異なった目方を使って実験していきます。多様なてこの応用について話せる土台がここで出来上がり、私たちの手足の中にあるてこの作用についても取り組んでいきます。最後には天井からぶら下げた滑車装置でクラスの人を引っ張り上げさせます。さらに音響学においては、7年生でモノコードの弦を半分の長さにしたらオクターブが響くように音と数の関係をつなげて見ていきます。また、基音の倍音も学びます。
光学においては、もう一度プリズムに取り組みます。プリズムを通して見た時白と黒の境界線で現れてくる「色」について観察します。その後生徒が体験したことのある内容について話をしていきます(虹、青空、青い煙、太陽が沈むときの空の色彩―夕焼け等々)。さらにレンズと鏡を使った実験を行います。日常生活の中で体験する電流の熱作用について取り組んでいきます(トースター、投込式電熱湯沸かし器、アイロン等々)。
エポックは、電流の磁力作用の可視化の実験で終わりになります。
歴史(社会)
エポックの初めでは、十字軍の経過を話していきます。この中でより詳しく取り組んでいくのは、200年間オリエントと西洋の間に行き来が続き、東から流れてきた文化によってヨーロッパ人の生活がどのように変化していったかについて生き生きと生徒に語っていきます。意識が外に向かう年齢である7年生は、ルネサンス期や大航海時代を学んでいきます。15世紀の幕開けを皮切りに、人類の新しい人生が始まるのだということを理解していきます。大陸発見者であるヴァスコダガマ、マゼランそしてコロンブスについては、実例を取り上げて非常に詳しく発見までの道のりを取り上げることができます。日本史では日本のルネサンス期にあたる、戦国~安土・桃山時代の日本とヨーロッパの出会いを取り上げます。この時代の目覚めた意識が、生徒の中に起こっている目覚めとリンクするような内容になっています。
地理(社会)
私たちは緯度、経度と時間の関係に取り組む中で、地球全体の観察をさらに続けていきます。大陸の形と重要な地域、国、中心的な、川、地形、山脈、都市を知り、しっかりと記憶し地図でまた見つけ出せるように練習します。生徒に中近東、ヨーロッパ、アフリカのそれらの国々の動物、植物、鉱物、文化そして言語、技術的設備、手工業、工業、交通に取り組んでいきます。アジアから離れた新しい文化圏の中で新鮮な学びが生徒の前に展開されていきます。ここでは生徒は自主的に研究発表を行います。
英語(外国語)
一人一人に文章や詩を語らせたり、全体で文章や詩を語らせたりするときにも、言語の発音に注意をおきます。バラード(物語詩)や探検物のような劇の要素があるドラマチックなテキストやことわざやエピソードの中で、生徒は他の国の民族の、歴史的、文化的、社会的観点に出会います。文法は、言語表現の中で、必要な支えになります。動詞の時制の取り組みをさらに継続していくのと並列して、一つ一つの文の成分がどのように文全体と関係するかを調べ、構文論、いわばシンタックス的構造を探り出していきます。
音楽
生徒たちの内面とリンクするように、8度の雰囲気を学びます。また、4年生~6年生までの課題の継続でダイアトニックの音階、輪唱、二声、三声の歌の演奏を通して、和声(長調・短調)を体験していきます。リズム、拍子の体験や音楽理論、音楽史も学んでいきます。
オイリュトミー
内面の世界を体験できる短調と長調の練習が始まります。三度のインターヴァルが変化する曲で全体が朗らかになったり、悲しくなったりすることを動きを通して体験します。身体の育成を支える銅の棒練習ではさらに空間移動を伴いながら手足を器用に動かし技術を身につけていきます。さらに新しい言語要素が入ってきます。言語の中で特徴的音を強く表現するのです。より強く、より意識を持って空間フォルムとしぐさの中で動きます。生徒の中で感情的要素がよりいっそう目覚め、オイリュトミーで生徒の感情を支えます。すっきりとまっすぐ立つという取り組みは、さらに12年生までさまざまな練習を通して常にはぐくんでいきます。
体育
筋肉の取り組みからさらに発展した腱と取り組みます。しかしこの腱は8年生において骨格と強く結束します。体操の取り組みにおいては以前よりもよりいっそう強く、てこの原理が作用する練習をしていきます。てこの原理は7年生の物理学、8年生の人間学で取り上げられるテーマです。「リズムとジャンプ」のテーマは、子どもがあまりにも速く体の重さの中に落ちていく傾向があるので、それに対抗していく体操の取り組みとします。ゲームからこの学年では競技に移ります。ハンドボールやバスケットボール、ポートボール、バレーボールなど、本格的な球技の練習が始まります。
絵画
さまざまな自然の生き物を水彩で描いていきます。物体に陰影をつけて白黒で描く明暗法素描や、遠近法を導入します。遠近法では、ルネサンスの人々が行っていたように、絵を描いていきます。ここで必要なのは定規と鉛筆です。消失点と層準(水平線)に取り組み、中心へ向かって短縮された距離の構造を探していきます。それを使って、並木道や町、都市、部屋の中、階段など作図してき、さらに構造をぼやかすことなく、さまざまな装飾を加えていくことができます。さらに層技法もより高い技術で継続されていきます。
手仕事
誕生する生徒の内面を表すものとして、履物や袋物づくりを通して、平面を立体にしていく体験をします。
靴製作は足の役割、機能に一致し、見た目にも美しい靴を製作していきます。生徒の足の大きさに合わせ、それぞれの生徒が自分の足に合った足の裏の型を作ります。そして形、色、機能がぴったり自分の足に合う靴作りの道筋を生徒に自分で探させながら、製作させていきます。ここでは生徒に自分自身の足に注目させ、意識を持たせることを要求します。布から革に素材が変化することで、喜んで生徒は取り組みます。
園芸
7年生は、すでに自分たちで自主的に仕事ができるので小さなグループを作ることができるでしょう。詳しく正確な植物の知識をさらに学んでいきます。しかも冬の木本植物の鑑定もしていきます。
園芸の授業は、いのちを育てるというポジティブな行動を通して実践的環境学、生態学の学びになっていくのです。地球全体に広がる環境汚染問題について、不満や嘆きを授業で取り上げるよりも、よっぽど大きなエコロジーの作用を生徒にもたらします。「社会的な能力」をこの教科ではぐくんでいけるのです。
木工
空洞の形成が中心になります。さまざまなものを入れることができる美しい「器」ができるまで、生徒は長期間かけて作業をしていきます。子どもは空洞、いわば自分の心の内面空間を作っていくのです。スプーンよりもより大きな空洞を作ることはより多くの忍耐が必要となります。しかし丁寧に作業し、作業したものを日常の中で使用することを通して、生徒たちはより地に足がついた実践的な人間として成長していきます。
練習
エポック授業の内容を深め、定着させるためのもので、主に国語や算数の学習の中で漢字や計算の練習など、反復練習の必要なものを集中的に行います。徐々に自己学習をできる力をつけるために、下校後の子どもの時間の使い方もサポートしていきます。宿題の取り組みもさらに意識して行い、よい学びの習慣から課題をやり終えるという、意志の力を育みます。
学年ごとのイベント
自然界をより密度濃く体験できるために海山へ向かい数日間自分たちで自炊をし、掃除洗濯を共にしながら、尊い自然体験をします。現在は山口県の祝島で、島民の方々と交流しながら、合宿を行っています。登山合宿を通して自然と強くつながり、忍耐強く登り続け、最後に頂上で大きな達成感を味わえる内的力も育まれていきます。7年生では1年生と7年生が兄弟学級となり、新1年生をサポートします。下の学年をしっかりとサポートすることで、責任感が養われます。小規模の劇の取り組みも行われ、四季の行事では低学年を導いていく役割も担っていきます。