テーマ
豊かなファンタジーの世界に満たされながら、
手足を使った生き生きとした学びをしていくこと
学年の特徴
小学校に入ったばかりの1年生はやる気でいっぱいです。担任の先生のもとですべてを学びたいと身体にみなぎる意欲をもって、まずは動きを通してさまざまな教科を学んでいきます。
この学年では、心を動かすことが何よりも大切です。それは心を動かすと知力に結びつくからです。そのため授業は楽しくなければいけません。心が動き、楽しいと子どもが感じれば、学年が上がって勉強が難しくなってもついていく能力が養われていきます。
学年ごとの教科
国語
先生の話すファンタジーのお話に耳を傾けながら、子どもたちが初めて文字と出会っていきます。最初はお話を聞いて、次に絵を描き、その絵が抽象化されて文字になるということを学んでいきます。例えば、「女の子がある朝、起きたらとてもきれいな朝焼けだったので、手足をいっぱいに広げて“あ〜”と言って、びっくりしながら大喜びしました」というような簡単な話を聞いた後に、子どもたちは女の子が身体いっぱいに手を広げて、朝日のところで喜んでいる絵を描きます。そして、手を広げている女の子の中に「あ」という文字を入れて形になるまでの過程を繰り返すことによって、「あ」というのは、喜び、驚き、驚嘆している表現なのだということが同時に心の中に入っていくのです。1日1文字からゆっくりとはじめて、慣れてきたら量も多くなり、もちろん語数はどんどん増えていきます。1年生では、ひらがな、漢字に親しみ、詩歌の朗唱は、高学年まで継続していきます。
算数
数えること、数字、四則計算を行います。数は身体を動かして順に数えることから始まります。それもただ身体を動かすだけではなく、例えば2の倍数になったら、止まったり手を叩いたりしながら数える取り組みをすることで、感覚的に2と4と6と8は関係あるのだとわかります。それがかけ算だとは教えなくても、倍数を強調した数え方をやっていくうちに、2年生の九九の勉強になったときには身体に染み込んでいるので、スムーズに倍数が子どもの中に入っていきます。
数字も国語の文字の授業と同じように、絵を描いて、数字のイメージを引き出しながら、アラビア数字とローマ数字に触れていきます。それだけではなく、1が「私」、2は「太陽と月」「昼と夜」、3は「お父さん、お母さん、私」、4は「東西南北」や「春夏秋冬」、5は「人間の五体」や「リンゴの中にある五角形」、6は「ミツバチの巣」や「雪の結晶」、7は「一週間」や「虹」…というように自然界にある数に子どもが親しんでいけるように導きます。その後に足し算を教えます。そこでもストーリーがあって、足す・引く・掛ける・割る、という四則計算をまるで人間の性格のようにイメージして学んでいきます。それは人間に近ければ近いほど、子どもは学びやすいからです。子どもは自分のこととして記号や数字をとらえ、日常の一部として見られるようになります。
フォルメン線描
フォルメン線描とは、文字や数字の根底にあるフォルム(形)を純粋に学ぶ、シュタイナー学校独自の授業です。文字も数字も幾何学もすべてが形からできています。ということは、直線や曲線を使って、基本的な形を素描し、形の感覚を養うことで、その後に出てくる文字や数字の感覚を養う準備ができるのです。1年生の段階では大きなA3大のノートにできるだけまっすぐな直線を垂直、水平、斜めなどさまざまな角度で描いていきます。曲線だったらアーチや丸など初歩的な大きなフォルムが中心です。
水彩
色をモチーフにした物語を手がかりに、赤、青、黄色の原色に親しみ、色彩の持っている性質を体験していきます。光り輝く黄色、静かな青など、豊かに語る色彩の世界の体験を通して、子ども自身の内面が広がっていきます。色彩の世界は子どもの内面を深め、心に調和をもたらします。より豊かな体験になるように、色たちのお話は、先生が生き生きと作っていきます。
英語 ドイツ語(外国語)
模倣をしながらの詩などの朗誦を通して、異国の言語の響きを体験していきます。遊びや歌を学ぶ中で、生徒の内面が豊かに外国語へと開いていき、活発に取り組むことによって、言語に対する柔軟さと開放性を身につけていきます。これはのちに歩んでいく人生に、社会的な能力を与えるのです。現在の外国語教科は英語とドイツ語です。
音楽
ファンタジーに満ち溢れたお話を聞いた後、音楽の音色に耳を澄まして豊かな音の体験をしていきます。また、身体全体を使って、イメージ豊かに音楽に親しみ、動きを通して音を体験していきます。「聴く」という取り組みは、子どもの心に調和をもたらし、深い集中力を身につけていく大切な学びの一つです。
オイリュトミー
他の授業と同じように、オイリュトミーの授業もファンタジーに満ち溢れたメルへンの世界の中でおこなわれます。 クラス全体が輪になり、直線や曲線、三角形などの初歩的な形をメルヘンのお話にあわせて動いていきます。頭から足のつま先まで全体を使うように進んでいき、手と足を同時に動かしたり、空間の中を動いたりしながら、秩序だった美しい動きの体験を深めていきます。また、友だちと一緒に楽しみながら、音の響きや音楽に合わせた基本的な身ぶりや動きも行います。
遊びの体育(体育)
遊びの体育では、輪になったり、歌を歌ったりしながら、想像力と身体を使う遊びをします。そしてリズムやバランス感覚を養うこともしていきます。また、協調性を養う簡単なゲームにも挑戦していきます。このように体を鍛えるだけでなく、感情と想像力も同時に養い、子どもたち同士の社会的能力も育んでいきます。
手仕事
羊毛などの自然素材に親しみ、棒針を作り編み物をしていきます。編む行為は、論理的な行為であり、手と指を器用にしていくことで、子どもの思考能力を活発にしていきながら、密度の高い集中力も養っていきます。さらにアイヌ民族の刺繡にも取り組みます。
練習
エポック授業の内容を深め、定着させるためのもので、主に国語や算数の学習の中で文字や計算の練習など、反復練習の必要なものを集中的に行う時間です。しっかり練習することで、次にそのエポックが再び始まった時、基礎が身についた形で再び出発できるのです。お散歩や誕生会、季節の行事なども練習の時間に行います。
学年ごとのイベント
野外での自然体験を通して、より深く自然とつながりながら、豊かな心を育んでいきます。1年生では毎日お散歩をします。 多摩川に行って、四季折々に移り変わる自然に親しむことで豊かな感性と、自然界に対する意識の芽が養われます。やがてそれは思考を使って自然を理解する、環境への意識となって、培われていきます。 四季折々の行事では、端午の節句、七夕、お月見、アイヌ民族の行事、クリスマスのアドベントガーデン、正月のどんど焼き、豆まき、ひな祭りなどを行います。どの行事もお祝いの場を作り、歌を歌い、詩を唱え、音楽を奏で、場合によっては行事に合った料理をクラス全員で作り、皆でテーブルを囲みます。その中で人と協力し合う社会性と食に対する感謝の気持ちも育んでいきます。日常では、兄弟学級のお兄さんやお姉さんに休み時間に遊んでもらったり、助けてもらったり、いっしょに掃除をしたりしながら、この学校に慣れていき、学校の一員となります。