2年の学び

目次

テーマ

自分の中の2つの要素への目覚めと気づき

学年の特徴

2年生は、1年生と同じようにファンタジーの中で生きていますが、違うのはいろいろなことに目覚めて、物事の2つの要素(善と悪、美しいものと醜いもの)に気づき始めるという点です。

自分の中にもいたずら心やずるさ、悪い部分があると気づき、友だちとのやりとりや人間関係の中で表面化することもあります。ただし、教師は子どもたちのずるいところ、目覚めたところを成長と受け取り、否定しません。むしろその意識に寄り添った授業をしていきます。

たとえば、子どもたちが感情移入しやすいように、お話のテーマも、イソップ寓話の悪さばかりしているずる賢い狐のような話を多くしていきます。話の中で悪の部分を体験させることで、次第に子どもは次の要素が欲しくなります。それが、崇高な行いや聖人の要素です。子どもたちは悪い部分と同時に、聖なるものへ向かう気持ちも持ち合わせているのです。悪い部分だけを打ち消してしまうと、逆に求める気持ちが強くなるでしょう。お話を通してきっちりと悪い部分を消化できると、自分の中にあるのはそれだけではないと気づけるのです。

人間は清く正しく美しい存在というだけではありません。人間は両方の要素を持っていて当然ですから、それをきちんと体験させることが大切であり、人間性を豊かにすることにもなります。負の部分も受け入れることで、力を持て余していじわるに使うのではなく、誰かのために使うというように、変容させることができるようになっていきます。

学年ごとの教科

国語

メルヘンの世界を話しますが、グリム童話やおとぎ話ではなく、イソップ寓話のような人間同士のいざこざが動物を通して描かれる戒めのお話や、聖フランシスコや空海などの聖人伝(人間の気高さを表す物語)をしていきます。また、1年生の続きで漢字やカタカナを学んでいきます。また、正確にノートに書く中で、助詞の練習にも取り組みます。漢字の授業では、まずお話をして絵を描き、その中から漢字を探し出すという学びをします。小さい学年から漢字とこのようにイメージを通してつながっておくと、学年があがって部首を学んだときに、わかる漢字がぐんと増えていきます。

算数

1年生で取り組んだ四則演算をさらに発展させます。足し算引き算では、数の位取り、繰り上がり、繰り下がりの内容を学びます。また、かけ算の背後に隠れている美しい幾何学の模様には、集中して取り組みます。イメージ豊かな先生のお話を通して、一つ一つの九九の段から美しいフォルムが生まれていく様子に、子どもたちは心から喜びます。すべてのフォルムを丁寧にエポックノートに書いた後には、一般的な九九の練習をします。

フォルメン線描

想像力が豊かに働く中で、左右対称のフォルムや、上下を鏡写しにするフォルムを練習していきます。線対称ということは、とても集中して片方を観察しながら、もう片方はそれとは鏡写しに描いていく、高度な作業です。しかし、それを練習することで、内的観察から思考に発展していく力を育んでゆけるのです。内面のバランスと心の調和がこのフォルメン線描の練習で生まれます。

水彩

1年生から行った色の体験内容がさらに発展していきます。色のお話や物語から出発し、例えば色と色が出会って新しい色が生まれるように練習していきます。または、赤と緑の2色を使い、中心を赤で描き、周り緑色で包み込むように描いた後に、別の日では中心が緑で周りを赤で包み込むといった反転させる練習もたくさん行われます。そのような取り組みの中で純粋な色の世界の体験と、色の調和、色の動き豊かなファンタジーを学んでいきます。

英語 ドイツ語(外国語)

1年生においては、クラス全員で声をそろえて学んでいましたが、2年生からは、一人ひとりの生徒と短い会話をします。例えば天気や曜日、家族について聞き、さまざまな答えを見つけていきます。遊びやなぞなぞを通して、子どもは衣服や動物そして周りにあるすべての言葉を学んでいきます。1年生からの模倣する力を通して、歌や詩など、言語の響きをさらに継続して体験していきます。

音楽

1年生のときと同じように、イメージ豊かな音楽体験を行っていきます。打楽器、笛、歌、動きを通して身体全体で音を体験していき、四季の歌に加えて、朝、昼、晩など一日がテーマになっている歌のレパートリーもどんどん増やしていきます。 耳を澄まして聴く練習をすることは子供の注意力を高め、クラス全体で演奏するリコーダー(5音階のもの)は子供の社会性が養われていきます。さらに2年生では、カンテレ(小型のハープ)が導入され、カンテレの弦を奏でながら、耳を澄ますことを通して、音楽的要素の基本を深く習得していきます。

オイリュトミー

動物寓話の話から発展して、たくさんの動物たちをオイリュトミーの中で動きます。全員が輪の中心を向き、くま、カタツムリ、ウサギ、鳥などそれぞれの動物たちが持つ特徴をつかみながら、直線や曲線、三角形などの形に動きます。友だちと一緒に動くことの喜び、秩序だった美しさの体験を深めていきます。また、物語の役を与えたりしながら、中心授業のお話の内容や、季節にあった内容、子どものさまざまな活動を動いていきます。

遊びの体育(体育)

遊びの体育に新しい要素が入ってきます。質問や応答などの、会話的な要素が加わるのです。「狼はまだいるか?」「いるー」「いなーい」など動物寓話の内容をつかって子どもたちが動物として出会える遊びをしていきます。子どもは遊びの中で、悪と純粋無垢な存在を体験し、その緊張した関係を自分のやり方で解決していく事に取り組んでいきます。さらに、協調性を養う簡単なゲームにも挑戦していきます。

手仕事

子どもたちが2年生になり、編物において右と左の網の目に対する感覚が確実になったら、かぎ針編みが導入されます。右手でかぎ針を持ち、左手に糸をかけ作業します。新しい作業のリズムの中で、それぞれのくさりの目を注意深く見つけていきます。くさり編みと細編みをリズム的に交互に繰り返し、渦のように円状にだんだん大きくなるよう編んでいき、網や大きな網目の入れ物などをのちに製作できる準備をしていきます。さらに、アイヌ民族の刺繍にも取り組みます。

練習

エポック授業の内容を深め、定着させるためのもので、主に国語や算数の学習の中で文字や計算の練習など、反復練習の必要なものを集中的に行う時間です。しっかり練習することで、次にそのエポックが再び始まった時、基礎が身についた形で再び出発できるのです。お散歩や誕生会、季節の行事なども練習の時間に行います。

学年ごとのイベント

1年生からの継続で、多摩川へ散策に行き、自然の中での一年季節の移り変わりを深く体験していきます。豊かな自然を体験することで、水や光や風に草花に対する感性が養われ、教室での学びもより一層深まっていきます。のちの高等部ではこれらの経験が理科的な事象への気づきや学びを促していきます。さらに四季折々の行事体験を通して、より深く自然とつながりながら、豊かな心を育んでいきます。端午の節句、七夕、お月見、アイヌの行事、クリスマスのアドベントガーデン、正月のどんど焼き、豆まき、ひな祭りなどを行います。どの行事もお祝いの場を作り、歌を歌い、詩を唱え、音楽を奏で、場合によっては行事に合った料理をクラス全員で作り、皆でテーブルを囲みます。その中で人と協力し合う社会性と食に対する感謝の気持ちも育んでいきます。日常ではもう一番下の学年ではない2年生なので、誇らしげに上級生の生徒とともに、下級生の世話をするようになります。

目次